コラム

中国水工環境コラム第76回 使用済み核燃料が辿る長い道のり

使用済み核燃料が辿る長い道のり

中国水工環境コラム第75回(2026 年7 月)
執筆者:中国水工(株)環境アドバイザー 大田啓一

 原子力発電の燃料棒にはウラン235(3~5%)とウラン238(95~97%)が詰められています。実際の燃料はウラン235(質量235のウラン)で、これに中性子を衝突させて核分裂させ、発生する熱で発電します(環境コラム第57回、2024年12月)。ウラン235の核分裂では、原発事故で問題となるヨウ素131、セシウム137、ストロンチウム90などの放射性物質も生成します。燃料棒は3年ごとに更新され、「使用済み」となった核燃料は、原子炉から出された直後の冷却処理に始まり、最終的な廃棄処理である「地層処分」に至るまでの長い道のりを辿ることになります。

 使用済みの核燃料は残存する少量の燃料によって発熱します。そこで、これを原発敷地内に設置されたプールに入れ、数年から数十年間、水で冷却します。資源エネルギー庁は、国内の原発から出た使用済み核燃料はウラン換算で19,000tに達し、全国の原発が持つプールの78%が既に埋まっていると報告しています。この窮状の打開のために考え出されたのが「乾式貯蔵」で、プールで予め冷却された使用済み核燃料を金属製容器に入れて、空気冷却するものです。今、上関町で検討されている中間貯蔵施設はこのタイプのものです。

 冷却された使用済み核燃料からウラン238と、これから生成したプルトニウム239を取り出す「再処理」は青森県六ケ所村の再処理工場で実施される予定でした。しかし、施設はまだ完成していません。やむを得ず、フランスやイギリスに依頼していますが、これが次第に難しくなってきたといわれます。再処理後の残滓は核燃料廃棄物としてガラスと混ぜて固め、六ケ所村などでさらに30年余り冷却されます。

 それでも残る高い放射能が自然レベルにまで下がるには約10万年を要します。この間の安全性を確保するのが「地層処分」です。これは核燃料廃棄物を地下300m以深の安定した地層の中へ閉じ込めるもので、廃棄物は人間の活動空間から隔離されて10万年を過ごすことになります。

 地層処分地の選定には各国とも苦労しており、特に、地層の安定性の確認や住民の合意形成などに時間がかかっています。ところが、日本ではこれが瞬く間に進み、既に4自治体(北海道寿都町と神恵内村、佐賀県玄海町、東京都小笠原村)が受け入れを表明しています。その中には安定な地層などありそうもない地域も含まれますが、不思議にも、4自治体全てに毎年高額な調査費が支払われています。

 原子力発電環境整備機構によると、日本のはるか先を進んでいるのはフィンランド、スウェーデン、フランスなどです。特にフィンランドでは地層処分施設の建設がほぼ終わり、試運転を始めています。それがどんなものか、また、わが国の取組みは真っ当なものかどうかについて、別の機会に取り上げたいと思っています。

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