COP30
中国水工環境コラム第71回(2026 年2 月)
執筆者:中国水工(株)環境アドバイザー 大田啓一
COP30(国連気候変動枠組条約第30回締約国会議)は昨年11月10~22日にブラジル・ベレンで開催されました。ベレンは熱帯雨林を流域に持つ大河、アマゾン川の河口に位置しています。ベレンではCOP30に併せて、京都議定書第20回締約国会合とパリ協定第7回締約国会合、科学・技術上の補助機関、ならびに実施上の補助機関の会合が開かれました。わが国からは石原宏高環境大臣を始め、外務・環境・経産・財務・文科・農水・国交・厚労の各省、金融・林野・気象の各庁と関係機関が参加しました。大変な規模の派遣団です。
日本の対応は、地球温暖化が深刻な問題として世界的に認識されていることを反映しています。この認識の浸透には日本の科学者と政府は大事な役割を果たしてきました。国際的な地球温暖化対策を主導してきたのは国連です。その大きな成果の一つが1988年に設立されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)です。IPCCには195の国と地域が参加しています。
IPCCの目標は各国の温暖化対策に科学的な根拠を与えることです。そのための作業に、日本を含め世界各国から数百人の科学者が集まりました。科学者達は世界中で報告されている気候変化に関する文献を集め、精査して、その時点で最も信頼できる科学的な知見をまとめてきました。2021年にノーベル物理学賞を受賞された眞鍋淑郎氏の気候モデルは知見のまとめに大きく貢献しました。IPCCが数年おきに刊行してきた報告書の一番目、第一次評価報告書(1990年)は、温暖化対策をしなければ、地球の平均気温は21世紀末までに3℃上昇すると結論しています。
これに驚いて、1992年、155か国が「国連気候変動枠組条約」を締約し、具体的な取り組みは毎年開催のCOPで決めることにしました。その取り組みに義務化を課したのが京都議定書(COP3、1997年)であり、パリ協定(COP21、2015年)でした。京都議定書では、先進国に、2008~12年の間にCO2排出量の5%削減を義務付けました。パリ協定では、産業革命以降の気温上昇を1.5℃に抑えることを目指し、すべての国に5年毎のCO2削減目標の設定と結果ならびに評価の報告を義務付けました。
ベレンのCOP30では議長国・ブラジルの努力で、ムチラオ(共同作業・協働のポルトガル語)を理念とする「グローバル・ムチラオ」が合意されました。主な内容は、1.5℃目標達成のための取り組みと国際協力の強化、それに必要な資金(気候資金)の増額、脱炭素社会への円滑な移行の仕組み作りなどです。これらの合意で重視されるのは「公平」よりも「公正」の視点で、気候資金の負担は先進国に大きく、経済的弱者が脱炭素化の中で不利にならないように配慮されています。このような世界的な協働の潮流からトランプ政権が離脱するのは大変残念なことです。


熱帯雨林を蛇行しながら流れるアマゾン川
アマゾン川上流域は野焼きの煙で霞む
