再生二期作
中国水工環境コラム第66回(2025 年9 月)
執筆者:中国水工(株)環境アドバイザー 大田啓一
昨年から今年にかけての米の値上がりと品薄によって、米を買いたくても買えない状況が出現しました。マスコミは「令和の米騒動」と呼んで騒ぎを煽りましたが、政府の備蓄米放出や米増産への政策転換などで落ち着きをやや取り戻しました。米騒動の原因は米の減産傾向に重なった猛暑の影響、流通の目詰まり、買いだめ、訪日客の米食による需要増などいろいろな可能性が挙げられています。決定的な要因は明らかにはされませんが、米の増産への取り組みは活発化しそうです。
温暖化が進んでも米の品質を維持しつつ生産量を増やす努力は以前から続けられ、優良品種の育成、栽培法の改善、農地の整備、AIの活用など、新しい技術と知見が蓄積されてきました。しかし、実際の農業へのこれらの導入は、米から大豆・麦・飼料米などへの転作を奨励する政府の支援を受けにくく、全国的な拡がりに欠けています。その状況下でも、新しい展開が期待されているのが「再生二期作」です。
二期作は種蒔きから収穫までの全作業を年2回行う農法で、東南アジアを中心とする熱帯地域で行われています。わが国でも沖縄や鹿児島などで行われていましたが、他の地域では秋の気温が下がるために年1回の稲作(一期作)しかできませんでした。再生二期作では、通常の二期作で行う2回目の種蒔きから田植えまでの作業を省いてしまいます。それによって収穫期を早めることが可能になりました。
そのやり方は、一期作目(4月~8月)の収穫時に稲株を地面から40cmの高さに残して刈り取ります。背の高い稲株には糖類などの栄養分が残っているので、これを使って新芽(ひこばえ)が出て、早く成長し、9月中に穂を付け、10月下旬には収穫可能となります。年2回の収穫は秋半ばまで続く高温傾向に支えられているので、地球温暖化を逆手に取った農法といえます。
再生二期作は農研機構の九州沖縄農業研究センターが、自ら開発した高温に強い優良品種「にじのきらめき」を使って体系化したものです(農研機構の発表)。2018年から情報公開されてきましたので、今では、省力・省コストの増産農法として広く知られるところとなり、関東以西、九州から沖縄までの各地で実際に試みられています。同時に、長期にわたる水の確保、増える肥料代、害虫対策、地域に向く品種の開発など、解決すべき課題も見えてきました。
また、一般的な心配として、増産に伴う米余りと米価の下落、それによる農家の米作離れの可能性が挙げられています。これに対しては国の米需要と供給の体制問題として議論しておく必要があります。同時に、地球上の6億7300万人の飢餓人口が安価な食糧の供給を希求していることも忘れてはなりません(「世界の食糧安全と栄養の現状2025」、国連5機関)。世界に平和的に貢献する日本ならばです。
