環境コラム

中国水工環境コラム第43回 異常気象と山火事

異常気象と山火事

中国水工環境コラム第 43 回(2023 年 10 月)
執筆者:中国水工(株)環境アドバイザー 大田啓一

 今年の夏の異常気象は台風2 号に伴う6月上旬の大雨に始まりました。6 月下旬から7 月中旬までは、太平洋高気圧の強まりで大量の水蒸気が流れ込み、全国的に大雨が続きました。山口県では6 月30 日から翌日にかけて、下関市と美祢市に「記録的短時間大雨情報」が出されました。これは数年に一度程度の短時間の大雨に対して地方気象台が出すものです。実際、下関市豊田付近では深夜の1 時間で107 ミリ、美祢市でも100 ミリの猛烈な雨が降りました。

 その大雨が一段落したら今度は一転、記録的な暑さでした。今年の暑さは体の芯にこたえると感じていましたが、案の定、7 月の全国平均気温は平年(直近の30 年間)より1.91℃高く、気象庁が関わる1898 年以降の125 年間で最も暑かったそうです。猛暑は8 月も続き、23 日には札幌の気温が36.3℃に達しました。これも125 年間で初めてだったそうです。全国的な暑さは9 月以降も残り、気象庁は高温傾向が11 月頃まで続くとみています。やれやれ!

 今年の夏は世界のあちこちで大きな山火事も発生しました。カナダでは5 月以降、1000 か所以上の地域で山火事があり、15 万㎢の森林が焼失したと報じられました。また、ギリシャのロードス島やスペインのテネリフェ島(カナリア諸島)でも山火事が発生し、8 月初旬のマウイ島(ハワイ)の火事の凄まじさは私たちの記憶に新しいところです。南半球でも真夏の2 月にチリ中部で大規模な山火事が発生しています。

 アメリカのWRI(世界資源研究所)が発表した世界の森林の焼失面積の資料を見ると、2010 年までは年間約4 万㎢だったものが、それ以降は8~10 万㎢に増えています。WRIはその原因が地球温暖化だと指摘しています。気温の上昇で乾燥した森林は燃えやすくなっているというわけです。広大な森林の焼失は生物多様性にも深刻な打撃を与えています。2019 年のオーストラリアの森林火災では、30 億匹の動物が犠牲になったと推定されています。オーストラリアは独特の生態系を維持していて、80~85%の動植物が固有種ですから、「種の絶滅」を危惧する研究者もいます。

 「種の絶滅」といえば、今から6600 万年前の白亜紀と第三紀の境(K/T 境界) で起きた恐竜絶滅が広く知られています。原因は直径10 ㎞ほどの巨大隕石が衝突して地球規模の大火災が発生したことと、舞い上がった粉塵やガスで寒冷化が引き起されたことでした。大型・小型の恐竜をはじめ全生物の75%が絶滅したと推定されています。大火災の跡は地層のK/T 境界に残る黒いススの筋として今日でも確認できます。

 かつての巨大隕石の衝突は天災だと考えられますが、今日の大規模森林火災は地球温暖化によるものですから、それは人災です。夏の大雨も猛暑の日々も地球温暖化が原因ですから、人がなんとかできるものです。地球は人智に望みを託しています。

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