火山の山容
中国水工環境コラム第 29 回(2022 年 8 月)
執筆者:中国水工(株)環境アドバイザー 大田啓一
桜島の南岳が噴火したのは先月24 日の夜8 時過ぎでした。大きな噴石が2.5km も飛び散るほどの爆発的噴火で、噴火警戒レベルは3(入山規制)から5(避難)に引き上げられました。幸いにも、3 日後にはかなり収まったためにレベルは3 に戻りました。普段の桜島は大変美しい山で、その姿は富士山にも似ていると言われます。言われてみるとそんな気がしますが、山容の類似性は一体どこからくるのでしょうか。
山々が連なる山脈では少し複雑ですが、孤立した山では頂上から麓に至る斜面の勾配が山容に大きく関わります。火山の場合には、その勾配は火口から流れ出る溶岩の粘性(粘り気)でほぼ決まります。粘性が小さいと溶岩はサラサラと遠くまで流れて緩い勾配となり、粘性が大きいと流れにくいので急な勾配になります。桜島と富士山の溶岩は共に中くらいの粘性ですから、斜面は両方ともやや急な勾配になっています。火山らしい山頂の形も似ています。
溶岩の粘性は中に含まれるシリカ(二酸化ケイ素、SiO2)の割合に依っています。シリカの割合が少ない(30~40%)と粘性は小さく、多い(60~70%)と粘性は大きくなります。理由は、シリカ同士が溶岩の中でゆるくつながり合う性質を持つからで、シリカの量が増えるとつながりは強まり、結果的に粘性は大きくなるわけです。
これが溶岩の粘性について教科書などに書かれている説明ですが、世の中には例外はあるものです。溶岩の中のシリカの割合が多いにもかかわらず、斜面の勾配が極めて緩い火山があります。萩市の沖合にある大島などの「萩六島」がそうです。人々は平らな土地を耕して生活しています。
山口県北東部に広がる阿武火山群は世界的にも珍しい火山の集まりです。「萩六島」も世界最小の活火山である笠山(約9 千年前に噴火)もこれに属しています。私の郷里にある変わった形の山もそうで、マグマのしぶきが空中で冷え固まって降り積もり、山を作ったものです。スコリア丘と呼ばれていますが、山容は馬の背に似ており、その名も「伏馬山」です。これらを含め、阿武火山群には50 もの火山があるそうです。
山口県には火山以外にもたくさんの地学資料があり、県立博物館は「山口県には古生代(5.6~2.4 億年前)から新生代(6,400 万年前以降)までのほぼすべての時代の地層が存在し、化石も全ての時代から産出する全国有数の化石産出県です」と、ホームページに書いています。また、岩石や地層によって作られる地学景観もたくさんあります。その中でも秋吉台は別格で、かつて滋賀の大学で一緒だった私の友人は、景清洞のすばらしさに魅かれて地学の研究者になったそうです。この夏休みに皆様はお近くのジオパークや地学景観へ家族旅行されたらいかがでしょうか。若い地学研究者が生まれるかも知れませんよ。