世界から見た日本の教育
中国水工環境コラム第 46 回(2024 年 1 月)
執筆者:中国水工(株)環境アドバイザー 大田啓一
昨年(2023 年)12 月5 日のNHK テレビはピザの結果を大きく報道していました。ピザはPISA のことで、OECD(経済協力開発機構)が行う国際的な学習到達度調査です。3年ごとに行われ、対象は15 歳の生徒です。今回の報道は2022 年に実施された結果についてで、これには81 の国・地域から約69万人、日本からは183 の高校・高専の一年生約6000 人が参加しました。
PISA の出題分野は、毎回、数学および科学の活用能力(リテラシー)と読解力です。日本は3 分野すべてでトップ5 に入り、特に、苦手の「読解力」で前回の15 位から3位に上りました。「数学的リテラシー」は6位から5 位に、「科学的リテラシー」は5 位から2 位へと順位を上げました。
先日の新聞に数学的リテラシーの問題の一部が載っていました。その一つは、あるバスケットボールチームを称える新聞記事の見出しで、チームが今シーズンの全試合で勝利し、得点差の平均は19 点であったことがわかります。質問はこうです。「得点差の平均を踏まえると、このチームが実際にはどの試合でも19 点差で勝ったことがないということはありえますか」。答えは、「はい」か「いいえ」の選択と、その理由の説明です。皆さんの答えはいかがですか。なお、日本の正答率は26.6%でした。
この問題のように、数学的リテラシーは実生活の中の数学的側面を扱います。PISAと一緒に行う生徒へのアンケート調査を基に、日本の数学の授業は日常生活との関連付けが薄いと、OECD は指摘しています。実生活に関わる授業が生徒の関心を呼びやすいことはわかっていますが、そのゆとりがないのが教育現場の実情です。
もう一つ長年の課題とされてきたのは、生徒の「自ら学ぶ意欲」が弱いことです。今回の調査で、「学校が休校になったら、自力で学校の勉強をこなすか」の問いに、その自信があると答えた生徒の割合はOECD 加盟国で最下位でした。この状況は読書に費やす時間でもうかがえます。山口県教委の調査では、学校以外で月に一冊も本(漫画を除く)を読まない県内の子どもは小学生で29.4%、中学生は35.6%だそうです。
では、大学生はどうでしょうか。1 日の読書時間は平均33 分で、その中には0 分の学生が46%もいるようです。また、予習・復習などに費やす1 日の勉強時間は、2019 年が48 分、2022 年はコロナ禍の影響で62 分に増えました(全国大学生協連、2023)。
欧米の大学生は、毎日の受講数が3 科目くらいで、あとはほとんど図書館に居ます。自習時間はざっと10 時間、インドで6~8時間が普通です。中国でも韓国でも図書館は学生で埋まっているのを私も見てきました。それくらい勉強しないと授業についていけないからです。日本の授業は易しすぎると留学生は言いますが、今日、大学の授業のやり方と中身は徐々に改善されつつあることは付記しておきたいと思います。