広い宇宙に生命を探す
中国水工環境コラム第 14 回(2021 年 5 月)
執筆者:中国水工(株)環境アドバイザー 大田啓一
前回の本コラムでは、太陽系においては、地球以外の惑星には生物が存在しないことをお話ししました。しかし、UFO や宇宙人の存在を信じる人達は、「太陽系でダメなら、銀河系で探せ」と主張します。銀河系は約1000 億個の恒星とそれ以上の惑星から成る星の集団で、中央が膨らんだ円盤の形をしています。太陽系はその円盤の端近くにあって、地球から円盤の中心方向を見た眺めが天の川です。
この広い銀河系の中に、人間と交信可能な知的宇宙人が住む星はいくつあるのでしょうか。その推定に使われるのが、1961年、アメリカの天文学者ドレイク(F. Drake)が発表した方程式です。彼自身が推定した星の数は10 個です。その数の確かさとは別に、アメリカは1974 年から銀河系の星に電波でメッセージを送り続け、返信を待ち構えています。2020 年からは中国もこれに加わりました。
もし知的宇宙人がいるならば、人間同様に、彼らの惑星で発生した原始的な生命体から徐々に進化してきたに違いありません。原始的な生命体の発生には、アミノ酸が要ります。アミノ酸はタンパク質をつくり、タンパク質の一部が酵素となって、他の生体成分をつくりだせるからです
アミノ酸がどのような反応によって太古の惑星上で生成したかは、まだ十分解明できていません。しかし、材料となる炭素と水素、酸素、窒素などがあれば、比較的容易に生成できると思われています。根拠は、宇宙の小惑星の一部である隕石のいくつかに、アミノ酸が含まれているという事実です。アミノ酸があれば、水や温度などの環境次第で、原始的な生命体へ、さらに初期の生物へと進化できそうです。
隕石についての問題は、地球の大気圏を落下する間に受ける数千度の高温です。この熱でアミノ酸が生成・分解する可能性が否定できません。地球についても、40 億年前に存在したはずのアミノ酸や原始生命体の化石があればいいのですが、それほど古い化石は残っていません。
この問題をクリアするには、地球以外の惑星に出かけて行って、アミノ酸が惑星の上で生成できることを証明しなければなりません。そこで登場したのが「はやぶさ」と「はやぶさ2」です。「はやぶさ」は小惑星イトカワから微量の現場試料を持ち帰りました。「はやぶさ2」はリュウグウから5gを超える試料を採取し、地球に届けました。果たしてアミノ酸はあるのでしょうか。研究結果が注目されます。
もし、銀河系の中に宇宙人が本当にいるなら、地球からの信号に応答したかも知れません。しかし、それが地球に届く前に、人間が自滅すれば交信できません。ドレイクは人間の存続期間を1 万年とみていますが、これが一番不確かだと言う専門家もいます。皆さんはどう思われますか。